痛みの仕組み

痛みと闘う現代人

痛みの「なぜ?」が分かれば、ケアをしたくなるもの。「我慢しても得しない痛み」は解消しましょう。

痛みのメカニズム

「なぜかだんだん痛くなる…」はだれの仕業?

発痛作用を増強する“プロスタグランジン”が、代表格です。

発痛物質はさまざまな種類がある何かが刺さったり、皮膚が切れてしまったり…からだの外からの刺激によって起こる「目に見える痛み」に対して、からだの中で起こる「見えない痛み」があります。「見えない痛み」は、痛みのもととなる“発痛物質”が蓄積することで、一時的では終わらない、持続的な痛みが現れます。
発痛物質は様々な種類があり、痛みそのものを起こすものもあれば、起きた痛みを増強するものもあり、なかでも「プロスタグランジン」という物質は代表格で、痛みの増強作用があります。からだの中で作られる一種のホルモンのようなもので、血管拡張作用や子宮の収縮作用など大切な働きを多彩に担っている一方で、からだに傷を受けた部位で炎症を起こし、ほかの発痛物質が出す痛みを強めてしまいます。また、外傷以外でも、筋肉や血管の緊張による血行不良が起こった時にもプロスタグランジンは発生。筋肉痛、あるいは肩こりからくる頭痛などが起こるのにも、このプロスタグランジンの影響が大きいというわけです。

痛みは痛みを呼ぶ。それが慢性的な痛み

痛みとお酒は似ている!?二次会に突入してダラダラ…覚えはありませんか?

何かが刺さったり、叩かれたり…こうした目に見える「一次的な痛み」に対して、叩かれたところが内出血を起こしたり腫れたりする「二次的な痛み」は、一般に「炎症」と呼ばれます。炎症が起こると、そこにはプロスタグランジンをはじめとする発痛物質がつくられます。この痛みは、何かに刺されるといった外からの刺激と同じように「痛み」の信号を脳に伝えます。これが「二次的な痛み」で、炎症がおさまるまでずっと続きます。これこそが、くり返し現れる「慢性的な痛み」の正体なのです。

この「慢性的な痛み」のメカニズムは、実は「お酒」と似ています。一杯ですませるはずがいつの間にか二次会に突入、そしてダラダラと続いた宴会の末、ひどい二日酔いの症状が…そんな「お酒あるある」を経験したことはありませんか?まず、第一の関門は「二次会(二次的な痛み)に突入するかどうか」です。ですが、からだの中で知らないうちに起こってしまう「炎症」と同じように、「二次会行くぞ」の号令が知らないうちにかかっていて、気付くと、二次会の席であれよあれよとお酒をつがれている…。「痛み」も炎症が起きてしまうと、発痛物質が次から次へと出てきて、痛みがひどくなって長引く…こう考えると、「痛み」も案外分かりやすいものだと思いませんか!?

痛みを我慢すると、痛みの大きさと長さに比例して記憶される

痛みが痛みを呼ぶ「痛みのリレー」のバトンを渡させないこと!

外からの刺激や発痛物質から出た「痛み」信号は、脳へ届くまでには「直通特急」ではなく、「普通列車」を乗り継ぎながら信号を伝えていく「痛みのリレー」が行われています。もともと、からだに及んだ危険を察知して回避するための重要なアラームとして機能する「痛み」は、過剰な痛みにならないように、痛みを弱める仕組みがからだにはそなわっています。
その仕組みが、リレーの中継地点に配置される「門(ゲート)」です。脳に痛みの情報が伝わると、反対に脳から指令が下って、ゲートを閉じて痛みの情報が伝わりにくいようにコントロールします。つまり、リレーのバトンが渡らないようにするのです。この仕組みは「下行性抑制」と呼ばれています。人間のからだには、痛みから自らを守るために、いわば「安心扉」がそなわっているのです。

「痛みのリレー」が上達すればするほど「痛みは記憶」されてしまいます。
ストレスや不安がリレーを食い止める「安心扉」の働きを阻害、リレーの上達を促進することも。

これらの痛みのメカニズムで最近分かってきた事実、それは「痛みは記憶される」ということです。痛みを放置したり、我慢したりすると痛みのもととなる発痛物質が産生され続け、痛みのリレーは何度も何度もくり返され、いわば「バトンの受け渡し×100本!」という猛特訓状態に。これでは「安心扉(ゲート)」の開閉が間に合わず、どんどん痛みのリレーは上達してしまいます。そして、痛みを伝える神経回路で、痛みが「記憶」されてしまうのです。こうなると、「痛みのリレー」の達人の誕生です。達人は、何も考えなくてもからだが先に動きます。反射的に痛みのリレーが始まってしまうのです。「頻繁」に起こり、「長時間」にわたって発痛物質が産生し続けると、痛みは記憶されやすくなります。また、一瞬のことでも発痛物質が大量に産生される強烈な痛みも同様です。つまり、痛みを我慢するということは、自ら「痛みを記憶する」ように促し、痛みの記憶を強化してしまっているのです。
さらに注意したいのは、リレーの特訓を阻む「安心扉(ゲート)」をコントロールする「下行性抑制」のメカニズムは、不安やストレスによってうまく機能しなくなることがある点です。痛みが持続してストレスがかかっている状態では、さらに痛みを感じやすくなってしまうのです。

COLUMN
「痛いの痛いのとんでけー」、本当に効果あるんです。

痛がる子どもにお母さんがやってあげる「痛いの痛いのとんでけー」。子供を安心させるおまじないのようなものですが、実はこれ、本当に痛みをやわらげる効果があるのです。それは、痛みのゲート管理システムに関係しています。痛みを感じると、まずゲートが開いて脳に痛みが伝達されます。そこで、肌をもんだりさすったりしてあげると、その刺激がきっかけになって、ゲートを閉じる働きが生まれ、痛みの刺激が伝わりにくくなるというわけです。大人が、お腹が痛い時に手を当てたりさすったり無意識にしていることも同じメカニズムなのです。なお、「手を当てているだけ」と「手を前後に動かしてさする」のでは、反復運動・振動を伴うほうが効果が大きいようです。

Doctor's POINT
痛みの記憶を作らないために、早い段階でのケアが何よりも大切です。