痛みの対応法

痛みに対する対策

痛みを記憶させない早期ケアが何よりも大切です。

「痛みのリレー」を阻む「安心扉(ゲート)」を閉めるのに一番有効なのは「安心感」。
「これがあれば大丈夫」「これをしていれば大丈夫」と思うことで、あなたの痛みの記憶力はだいぶ変わってくるはずです。「このケアどうなの!?」と疑うばかりでなく、「少しはよくなるでしょ」と楽観的になることが大切です。

痛みのケア実践1 フィジカル編

運動 | “動けた!”という明るい記憶で、痛みの記憶を塗り替える

痛みには様々な原因がありますが、頭痛や腰痛、肩こり痛、筋肉痛など、慢性的な痛みには、筋肉や血管の緊張から生じるものが多くあります。ですから、痛みの解消に大切なのは、からだを動かしてほぐすこと、そして正しい姿勢です。
ストレッチをしたり、からだを温めたりするケアでからだをほぐすこと、また簡単にできる姿勢チェックを習慣づけましょう。痛い場所をさするのも、痛みの伝達が抑制される効果があるのでおすすめです。
からだを動かすことの効用として、もうひとつ重要なのが、「動けた!」という記憶で、痛みの記憶を塗り替えていくことです。「痛みがあるからと運動を控えていたけど、ためしにやってみたら痛くなかった」という成功体験があると、そこから徐々に「いつも痛い自分」から「痛くない自分」へと記憶を塗り替えていくことができるのです。

Doctor's POINT
「神経質な人」「悲観的な人」は、痛みを増長させやすいのです。

人の心とからだはつながっていて、相互に影響し合っています。痛みに悩んでいる中、不安に思う気持ちやつらいと思う気持ちが強いと、いつも痛みに意識が向いてしまいますし、そうなると、痛みが記憶され、痛みを伝達するシステムが強化されて、いっそう痛みを感じやすくなってしまいます。神経質な人や悲観的な人は、「いつも痛い自分」のイメージが記憶され、余計に痛みを増長させやすいといえます。
私は、痛みの治療の一環として、たとえばからだが痛いから運動ができないと考えている人に、「ためしにやってみたら?」とすすめることがあります。テニスなど好きなことでからだを動かしてみると、痛みを忘れる瞬間があるのです。そうすればしめたもの。そこから「いつも痛い」記憶を「やってみたら、痛くなかった!」という記憶に、徐々に塗り替えていくことができます。実際にやってみたらよかった、という実感を重ねていくことが大切です。
気持ちは行動を変え、また痛みの感じ方も変えるということ。「痛みケア」のカギがそこにあります。(石井りな先生)

職場環境 | 学生時代を思い出して。1時間作業したら10分の休憩時間を!

長時間作業を強いられるオフィスワーカーにとっては、劣悪なデスク環境は、痛みの元凶といっても過言ではありません。PC作業はどうしても同じ姿勢が長時間続いてしまい、からだが固まってこりや頭痛、腰痛などの痛みを招きます。
正しい姿勢を保ち、からだへの負担を軽減するために、厚生労働省では「VDT作業*における労働衛生管理のためのガイドライン」を定めています。これを参考にPCまわりの環境を整えることで、痛みはかなり改善されるはず。便利なグッズも多彩に販売されているので、取り入れてみるのもよいでしょう。
また、心がけたいのが、「1時間作業したら10分休憩」。学生時代には、授業のあいまに必ず休憩時間がありました。仕事ではついつい、集中すると何時間も作業を続けてしまいがちです。タイマーなども上手に活用して、1時間経ったら席を立ち、遠くを見たりストレッチをしてからだをほぐしましょう。
もし、慢性的な痛みがつらい時には、産業医に相談して改善方法を聞き、場合によっては治療を受けることも大切です。
*ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT (Visual Display Terminals) を使用した作業をいい、一般的にはコンピュータを用いた作業を指す。

オフィスの環境を整えるグッズで痛みケアを!
  • ノートPC用スタンド
    スクリーンが目の高さまで持ち上げられるため、見やすくなり正しい姿勢を保って作業ができる。
  • ノートPC専用
    デスク&チェア

    ノートPC作業に最適なのは「低座後傾姿勢」とし、姿勢が保てるよう設計されたデスク&チェア。
  • 時間管理タイマーアプリ
    作業しているとつい休憩を忘れてしまう人におすすめ。作業、小休憩、長い休憩の3つのタイマーを設定できるアプリ。
  • 正しい姿勢をサポートする
    チェアクッション

    椅子の上に設置して座るだけで、からだのゆがみを矯正し、肩こり痛や腰痛対策ができる。

痛みのケア実践2 解熱鎮痛薬編

解熱鎮痛薬は、痛みをやわらげ、からだの自然治癒力をサポートする役割

同じ薬でも効き目には個人差があります。クチコミに頼らず、自分に合った「安心薬」を見つけてください。

本来、私たちのからだには「痛みのリレー」を阻む「安心扉(ゲート)」のように、不調や病気、けがを回復させる自然治癒力がそなわっています。ところが、疲れやストレス、生活習慣の乱れなどによって自然治癒力が低下することも…。そんな時、早く回復できるように補助的に働くのが薬の役割です。市販されている多くの解熱鎮痛薬は、痛みを増強させるプロスタグランジンの産生をブロックする働きを持つものが多いですが、こうして痛みや熱を抑えたりすることで、ストレスをやわらげ本来そなわっている自然治癒力が正常に働くようサポートします。痛みがあってつらい時には、解熱鎮痛薬で痛みをやわらげ、そのあいだに痛みの原因を解消して健康な状態を取り戻す。それが「痛みケア」の基本です。
そして、薬の効き目には個人差があることを十分理解する必要があります。「親が、友人が、この薬がいいと言っていたから使っている」という人、いませんか?同じ薬でも個人の体質によって効き目のほどは異なります。それは家族でも同じこと。家族や友人によく効いたからといって自分にも効くとは限らない、クチコミが通用しない世界。自分の症状に合う有効成分などをチェックしながら、いろいろな解熱鎮痛薬にトライしてみて、自分にあった「安心薬」を見つけましょう。

自分に合った「安心薬」を選ぶために知っておこう「鎮痛成分3兄弟」。

現在、市販の解熱鎮痛薬に使用されている成分には主に2種類あります。アスピリン(アセチルサリチル酸)に代表される各種の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)と、NSAIDsに分類されないアセトアミノフェンです。どの成分も、解熱鎮痛作用のメカニズムは基本的に同じで、痛みのもととなる物質「プロスタグランジン」を産生する酵素の働きをブロックします(アセトアミノフェンを除く)。
なかでも代表的な解熱鎮痛成分は、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物の3成分です。

  • 長男:アスピリン(アセチルサリチル酸)
  • 次男:イブプロフェン
  • 三男:ロキソプロフェンナトリウム水和物

医療国家・ドイツ生まれ。
「リュウマチの父を助けたい」化学者の家族を想う気持ちが解熱鎮痛成分の先駆者を生んだ。

非ピリン系の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)。アスピリン(アセチルサリチル酸)が初めて薬剤として合成されたのは1897年、医療国家ドイツでのこと。古代ギリシャ時代から知られていたというヤナギの鎮痛成分を研究してきた数多くの先人たちの研究を実用化に導いたのは、今も昔も変わらない「家族を想う気持ち」でした。リュウマチに苦しむ父親を助けたい一心で研究に挑んだというフェリックス・オフマンが合成に成功、1899年ついに世界の家庭に「元祖解熱鎮痛薬」を届けてくれたのです。
こうして開発されたアスピリンは、急速に世界中に使用が広がり、「世界でもっとも売れた解熱鎮痛薬」として知られています。開発から100年以上経った今もなお家庭で使用され続け、その使用量は年間50,000tにのぼります。これは500mgの錠剤で約1,000億錠分にあたり、ギネスブックにも掲載された解熱鎮痛成分の長男的存在です。

100年の研究が導く最新研究。新たな研究結果が報告され続ける稀有な「薬の王様」。

100年以上も解熱鎮痛薬として使用されてきた歴史から、使用に対する安全性が確認されているとともに、成分研究がもっとも進んでおり、「薬の王様」と称されています。鎮痛薬の分野はもちろん、幅広い分野での研究から臨床現場でも広く使われています。

実証!臨床現場から

心筋梗塞・脳梗塞の予防(血小板凝集抑制作用)

アスピリンは従来、解熱鎮痛成分として使用されていますが、医療用医薬品としては近年、血小板の凝集を抑制する、いわゆる「血液サラサラ作用」が認められており、心筋梗塞や脳梗塞の患者さんに対して二次予防として処方されています。
なお、これは、すでに心筋梗塞や脳梗塞を患ったことがある人が対象です。健康な状態でアスピリンを定期的に服用することで一次的な予防効果が得られる可能性についても、現在研究が進められています。

実証!最新研究現場から

大腸がん予防:がんのリスクとなる大腸ポリープの再発をアスピリンで約40%抑制

大腸がんは近年増加傾向にあり、厚生労働省「平成26年患者調査」によると患者数は26万人超で、部位別罹患率、死亡率ともに1位となっています。
2014年、国立がん研究センターより、アスピリンによる大腸がん予防につながる臨床試験を実施し、その有効性が確認されたという発表がなされました。
大腸がんへ進行する可能性の高い大腸ポリープを切除した患者を対象に、2年間にわたって低用量アスピリンを投与した結果、大腸ポリープの再発が約40%抑制されました。アスピリンの大腸がん予防薬としての確立に向け、同センターらの研究チームでは2015年、7000人規模の臨床試験を開始しています。

成分が子宮に移行しやすく生理痛におすすめ。小さな錠剤に製剤しやすい。
長男アスピリンに続けと、進む他分野研究。

非ピリン系の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)。1950年代から研究が進められてきた解熱鎮痛成分の中から選ばれ、1969年に英国でリュウマチ治療の医療用医薬品として販売開始されました。
他の鎮痛成分と比べて薬が子宮に移行しやすく、生理痛への効き目が期待できるとされます。小さな錠剤に製剤しやすいため飲みやすいのが特徴です。
また、近年は長男アスピリンに続けと他分野での研究が進められ、現在はパーキンソン病予防、前立腺がん治療への可能性について研究が進められています。

最新研究現場から

パーキンソン病予防への可能性

2011年、イブプロフェンがパーキンソン病のリスクを低くする可能性があるという論文が米国で発表されました。女性9万8,000人、男性3万7,000人の6年間のデータを分析したところ、定期的にイブプロフェンを服用した人は服用していない人と比べ、パーキンソン病のリスクが38%低減されたとのことです。さらに同様の研究も含めた解析を行うと、発症リスクは27%低いという結果が得られました。ただし、他の原因や消化管への影響も考慮すべきとしており、現時点では常用は推奨していないとしています。今後の研究の進展が待たれます。

医療用医薬品から市販用にスイッチしたニューカマー。

非ピリン系の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)。ロキソニンとして知られるロキソプロフェンナトリウム水和物は、もともとは医療用医薬品として1986年から販売されていましたが、2011年に一般用医薬品として発売されました。経口投与により胃や小腸で吸収される内用薬のほか、皮膚といったからだの表面から吸収される外用薬としてパップ剤、テープ剤も販売されています。
体内に吸収されてから活性型に代謝される「プロドラッグ」なので、服用した際の胃への負担は少ないとされますが、くり返し服用すると胃障害が起こることがあり注意が必要です。

最新研究現場から

頻尿予防分野における可能性

近年、可能性について議論がされているのが「頻尿予防」です。ロキソプロフェンナトリウム水和物によりプロスタグランジンの働きが弱まることで、腎臓の血液量が減り、つくられる尿の量が減る、と考えられています。
2015年の第22回日本排尿機能学会でも「頻尿で困る時に即効性に頓用予防できる薬剤の比較検討」においてロキソプロフェンナトリウム水和物の即効性と有効性について発表がありました。

Doctor's POINT
「ケア」と言っても、意外とカンタンなことも多いのです。

仕事の環境を整えるOAグッズをひとつ購入してみたり、解熱鎮痛薬を自宅に置いてみたり…
まずは「できること」から始めてみることです。